規程の体系、役員はどこまで決めなければならないのか

 ある事項を取締役会決議にて規定するか、あるいは下位の会議体に委任するか、委任するとしてどのように委任するかということについては、明確な線引きはできるのでしょうか。会社運営の責任は取締役会にあるため、いわゆる「丸投げ」のような包括的な白紙委任は許されないのはもちろんですが、細かいところまで取締役会で議論するのは現実的ではありません。

例えば、なにかの事件・事故があったときに会社として適切に対応できるようにするための報告の仕組みを作る必要がありますが、取締役会が報告の様式から手順までを定めるのは現実的ではありません。しかしながら、報告の様式をリスク管理部に定めさせる(リスク管理部がそれを作る)ように指示する必要があります。会社の規模によっては、役員がそれを指示することもありますが、その場合は、取締役会は担当役員を任命し、その役員にリスク管理の体制を整備するように指示するのが一般的でしょう。

なぜ、このように委任していくのかというと、専門的・技術的な事項に関する能力や社会経済の変化に対する迅速な対応という面で取締役会に限界があることが挙げられます。

担当の部門が規程を作成しているものの、それが誰からどのような委任を受けて制定されたのかが不明な規程があれば、それは取締役の関与が薄いあるいはガバナンスが効いていない状態とみなされる可能性があります。

労働法を無視した就業規定などがそれにあたります。さまざまな部署が自分たちのマイルールを押し付けることで業務のトラブルが起こっているとしたら、それは規程の体系に問題がある可能性があります。各部署で決めてよいこととよくない事、決めなければならないことなどを明確に定めることをお勧めします。

逆に、取締役会の指示(取締役会で決議された方針)が具体的な規定・手続きまで落とし込まれていなければ、それは方針が形骸化しているとみなされる可能性があります。

立派な方針があるものの、方針を掲げるだけに終わった例は枚挙にいとまがありません。顧客への迷惑行為(?)が多いとある都市銀行が掲げるお客様第一主義や、検査不正を繰り返した自動車会社の<社名>基本方針には「コンプライアンスを徹底し、誠実に行動します」とありました。主義主張を掲げるのは結構なことですが、ではそのためにどのような活動をしているのかが重要です。もし、お勤めの会社で形骸化している様子の方針があれば、まずは「その方針あるいは理念を実現するための責任者(担当役員)はだれなのか」を調べてみてください。多くの場合、これは会社全体の方針なので担当役員はいない、という回答がきますが、「なるほどですね」と思います。

規程の体系、役員はどこまで決めなければならないのか” に対して1件のコメントがあります。

  1. キタノマケドキ より:

    どこまでを決めれるかをあえて決めておかない、あるいはいかようにも読めるようにしておくことで、責任の所在を曖昧にするというのも、社内政治に終止しているようなJTC的には(自分たちの保身にとって)良い事にもなりうるのでしょうね。
    なるほどです。

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